月の記録 第20話


神聖ブリタニア帝国
第98代皇帝 シャルル・ジ・ブリタニア
その騎士である最強と謳われる12人 ナイト・オブ・ラウンズ
その第7席 ナイト・オブ・セブン

第3皇女 ユーフェミア・リ・ブリタニア
その専任騎士

第11皇子 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア
その元専任騎士

二人の主に仕える騎士などブリタニアの歴史上存在しない。
騎士にとっての主君とは、本来ただ一人を指し示す。
異国の人間が騎士になった例は他になく、他の皇族の所有物であった者が、主である皇族が健在であるにもかかわらず別の皇族の騎士となった例も、ましてや専任騎士でありながら皇帝の騎士になった者など、歴史上ただの一人もいなかった。
だが、極東の島国から留学生としてやってきた少年は、異国の人間であり、ブリタニアではなく日本の国籍のままでありながら、7年前、10歳という若さでルルーシュ皇子の専任騎士となり、17歳の年にユーフェミア皇女の騎士に望まれ、ルルーシュ皇子の騎士を解任後、ユーフェミア皇女の騎士となり、同年、シャルル皇帝の騎士に任命され、第7席を与えられた。この事は連日マスコミに取り上げられ、ブリタニア内外で大きく取り上げられた。
枢木スザクという名が世に知れ渡ったのはこれが初めてではなく、7年前にもひと騒動あったため、ブリタニアでは悪い意味で知名度が高かった。留学と言う名目での皇宮の長期滞在だけでも異例だったにもかかわらず、その後の専任騎士に関しては、サクラダイトを保有する日本への媚ではないかと騒がれたのだ。
だが、世界統一を行うため侵略戦争を行い、今現在もエリアと呼ばれる10の属国を手にしている大帝国の皇帝が、小国日本に対してそこまでする理由は見つからず、媚を売るぐらいなら属国にするはずだという者もいた。スザクが特別視されたのは、その容姿をマリアンヌ皇妃が好み、手元で飼い育てたいのだろうという者さえいた。
だが、そんな噂話がされたのはほんの短い間だけで、すぐに侵略戦争は終わったわけではないと知れ渡った。
7年前、マリアンヌ皇妃の住まうアリエスの離宮にテロリストが押し寄せた事件が発覚したからだ。マリアンヌ皇妃が狙われたのは、皇妃の中でも下位に座す庶民出の皇妃が、他の皇妃を押しのけ皇帝の傍につき従っている事を良く思わない者たちの差し金かとも思われたが、下位の皇妃ならば警備も弱いだろうと考えたナンバーズによる犯行だった。だが、マリアンヌ皇妃はただの皇妃、ただの女性ではなく元ナイトオブラウンズ。ブリタニアの国民であれば誰もが知る情報を知らなかったのか、あるいは最強の騎士を甘く見ていたのか。テロリストはマリアンヌの手で捕えられ、処刑された。
その件があり、皇帝は進行を停止。
今は獅子身中の虫を駆除し、後顧の憂いを断とうとしているのだ。
その間も国境では進行を阻止しようとする隣国と義勇軍による戦闘は続けられ、その火種を沈下させるため、皇帝はラウンズを派遣した。敵国の最前線を潰し、占拠する度に国境は塗り替わり、じりじりとブリタニアは今も領土を広げ続けている。

謁見の間には、帝国の紋章が刻まれた色とりどりのマントを纏う帝国最強の騎士たちが跪き、頭を垂れていた。
玉座には、皇帝。
物々しい空気の中、重厚な声が響き渡った。

「ナイトオブセブン、枢木スザク」
「はっ」
「エリア9で続く争いを鎮め、彼の国に引導を渡してまいれ」
「イエス・ユアマジェスティ」

エリア9国境では数日前から小競り合いが続いていた。
攻めてくるなら攻めて来いという強気な姿勢の隣国に対し、皇帝からの明確な指示が無い為、防戦一方となっていたその場所に増援として送られてきたのはたった1騎のKMF。白いその機体は力強く美しい、まさに騎士という出で立ちではあったが、援軍も無くたった1騎でこの状況をどうにかできるはずはないと、誰もが思っていた。
だが、その1騎は最前線に降り立つと、争いをやめるようにと説得を始めた。侵略戦争を仕掛けている国が、馬鹿にしているのか!と、火に油を注ぐ結果となりはしたが、その1騎は説得は無駄だと判断したとたんに敵陣に猛攻を仕掛け、瞬く間に敵国の兵器を無力化した。たった1騎の相手に投入された改造KMFは50を優に超えていたが、それに動じることもなく、その実力差を見せつけるかのように、ただ一人の死者を出すことなく、全ての敵をねじ伏せた。
銃弾が飛び交い爆炎が上がる中、物怖じする事もなく立ち続けるKMFに、人々は恐怖と畏怖と羨望の眼差しを向けていた。
白いKMFの名はZ-01ランスロット
パイロットは任命されたばかりのナイトオブセブン、枢木スザク
この日より、ブリタニアの白き死神と呼ばれ、恐れられるようになった。

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